今回は蕪木さんというお店のチョコレートをご紹介します!
とても素晴らしいお店なので前置きを長めに取らせてください。笑
→参考文献:わたしをひらくしごと
蕪木とは。
東京台東区にある、趣ある佇まいの喫茶店。
オーナーは蕪木祐介さん。
自家焙煎コーヒーとチョコレートのお店です。
流れる心地よいジャズ、店内は無駄な装飾をせず、一輪挿しの花がさり気なく生けられているのみ。
『自分に籠もるための場所』であり、『良いため息がつける場所』、『魂が鎮まる空間』。
元気な時にしか門をくぐれないような場所ではなく、
お客様がボロボロな気持ちのときでも、行きたいときに行けるお店でありたいという願いから、オーナーの蕪木さんはあまり積極的にお客様には語りかけず、
『僕は黒子で良いから』と暗い色の服を着ていらっしゃいます。
店内を全体的にほの暗くしたり、メニューの紙を珈琲で染めて馴染み良い色にしたり、フラットな気持ちで足を踏み入れられる空間づくりを心掛けておられるそうです。
私自身もチョコレート検定の勉強の中で知り、ぜひ一度行ってみたいお店です。
蕪木がオープンするまでのお話。
大学生時代、蕪木さんは動物科学を専攻されていました。
高校を卒業してすぐの一人暮らしで不安な中、気持ちを整える為に喫茶店で過ごした毎日から、
『こんな形で人の役に立つこともあるんだ』と、ご自身も同じように喫茶店を営むことを決意。
その後、就職に向けて図書室で調べ物をしていた際、カカオ豆についての論文を発見。
コーヒーとの共通点がたくさんあることを知り、チョコレートのことも勉強したい!と仕事を探すも、当時は個人でカカオの焙煎技術をもっている人はおらず、メーカーの門を叩く以外に方法がなかったそう。
面接では『コーヒーの知識をカカオで活かせるはず』とアピールし、無事に株式会社ロッテへ入社。
入社後、あの日図書室で見つけた論文の著者が、同社でチョコレート開発に携わっていることが判明。
蕪木さんはその方と一緒に、カカオ豆やチョコレートの研究、製品のレシピ開発の仕事に就きます。
学生時代勉強していた動物科学も、発酵や、乳の季節的な成分変化などの専門分野で大いに役に立ちました。
会社に勤めた8年間の間も、仕事が終わったあとに珈琲豆の焙煎の勉強を続け、ツテのある飲食店に卸したりしながら、
チョコレートと珈琲まみれの毎日を過ごします。
退社後、チョコレートのレシピ開発、カカオ・チョコレートに関する講義、カカオ栽培地での指導、品種・発酵研究をされたのち、
2016年2月2日、著書『チョコレートの手引』を出版。
同年11月7日に喫茶店『蕪木』をオープンしました。
ザーッと書いただけでも、凄い人が素晴らしいお店でチョコを作っておられることが伝わったかと思います!伝わってるといいな!笑
ちなみに蕪木さんの著書『チョコレートの手引』は、明治チョコレート検定上級のテスト範囲にも指定されています。
それではお待たせ致しました。
今回はそんな蕪木さんのチョコレートのご紹介です。
蕪木さんのチョコレートは、普段店頭販売をメインにされていて、通販はほとんど売り切れの状態。
在庫を補充した告知などもあまりされないので、
覗いたときにあったら買いです。
今回買ったチョコレートも、本当にたまたま残っていたものでした。笑
(見つけた3日後には売り切れていました…😅)
かもがや
グレーの箱に、シンプルな文字とラベル。
本のようにも見える上品な佇まいです。
裏側もシンプル。
かもがやと聞いて思い浮かんだのは、宮沢賢治の短編童話、『土神と狐』でした。
蕪木さん自身も、『宮沢賢治が好きで岩手の大学に進学した』そうなので、もしかしたらと。
かもがや自体は、明治時代に牧草として導入され、帰化植物として野生化しているイネ科の雑草です。
花粉症の原因になったりもします。
宮沢賢治の童話では、擬人化された樺の木に気に入られたくて見栄を張った狐の、最期の持ち物として、かもがやの穂とハイネの詩集が描かれていました。
開封!
蛇腹状の黒い紙の下に、金の包装紙に包まれたチョコレートがいます。
チョコレートの説明書きも。
箱を開けたときからもうナッティな良い香りがしてる…
美しすぎるモールド。
煙さの中から現れる、深いカカオの香りとコーヒーの苦味。プラムや干しぶどうを思わせる酸味があり、とても上品です。
炒ったアーモンドを噛んでいるようなコクが、長く余韻を残して消えていきます。
程よい薄さ。
スモーキーであり、フルーティであり、ナッティ。
食べ終わったあとも、しばらく口の中にスモーク感が残ってます。
喉を燻されたかも、と錯覚しそうな。
美味しい。一欠片の満足度が大きい。
果香(かこう)
続いて果香。
こちらは少し割れてしまっていました💦
元の箱に戻してキレイキレイ…!笑
赤い果肉、フルーツの酸を連想する香り
口の中で転がすと、一番に広がるのはピーナッツバターのようなコク。
スモーク感は、かもがやに比べると強くないです。
ヨーグルトやプラム、ラズベリーのような心地よい酸があり、噛むと強まります。
爽やかで綺麗なんだけど、後口はこっくりとしていて、こちらも余韻が長い長い…。
マダガスカル産でフルーティと聞くと、刺すような酸味を想像しがちですが、
果香は独特なスモーク感のおかげでどこか影を感じる雰囲気。
果香を食べていたら浮かんできた曲(東京事変)
果香から人が生まれたらこんな感じかもしれない(こら)
蕪木さんの目指すチョコレートとは
蕪木さんが大切にしているのは、削ぎ落とされたものをていねいに楽しむ精神性、日本人らしさ。
インパクトの強い味よりも、日本人の好む濃厚な口当たり、角の取れたまろやかで丸い味わいになることにこだわりを持っておられます。
世界が求めるチョコレートと、日本人が好むチョコレートは別物だから、世界一が日本一とは限らない、という理由で、コンベンションなどにも一切興味がないそう。
あくまでも目を向けているのは、目の前で手にとって食べてくれる人なんだなと。
私も作り手として、忘れてはいけない気持ちだなと思いました。
いつかきっとお店に伺います。
素敵なチョコレートと出会えて幸せでした。
ごちそうさまでした!
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